メインシアター(東5ホール会場内)

2019年2月1日(金)

【特別シンポジウム】マテリアルズ・インフォマティクス: データ駆動型高分子科学の新展開

【開催時間】10:30-11:50

 
機械学習とシミュレーションの融合による高分子材料の高次構造と物性の予測
10:30-10:50

青柳 岳司

国立研究法人産業技術総合研究所

機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター

総括研究主幹

青柳 岳司

【講演者プロフィール】

1987年4月より化学企業にて29年間高分子材料を中心として計算機材料シミュレーションに携わる。その後2016年5月より産業技術総合研究所に移籍、NEDOプロジェクトを中心に、企業時代とは異なる立場で計算機材料シミュレーションの研究を継続すると同時に、企業と国研の橋掛けを行っている。

【講演概要】

相分離構造、粒子分散構造というような高分子材料の高次構造は、材料の機能・物性設計のための重要な因子である。本講演ではこのような高分子材料の高次構造を考慮した計算機シミュレーションおよび機械学習によるアプローチの試みを紹介する。特に現在NEDOプロジェクト「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(略称:超々プロジェクト)」において開発中のシミュレーション・計測・機械学習を統合するシステム(拡張OCTA)に関して、インターフェースとシミュレータに新たに付け加わる機能と適用の事例を紹介する。

数学と材料科学
10:50-11:10

西浦 廉政

東北大学

材料科学高等研究所

特任教授

西浦 廉政

【講演者プロフィール】

東北大学材料科学高等研究所特任教授
MathAM-OILリサーチアドバイザー
編集委員:Physica D, SIADS, SIAM Interdisciplinary Journal "Multiscale Modeling and Simulation", 及びシリーズ編集委員Mathematics of Planet Earth, Springer.
https://www.wpi-aimr.tohoku.ac.jp//nishiura_labo/index.html

【講演概要】

本講演では,数学と材料科学の交流を2つの具体例で紹介したい.一つはポリマー材料に現れるアモルファス構造あるいは不均一構造の数理的記述子による,その階層構造と分類問題である.トポロジカルデータ解析と機械学習を組み合わせることにより,それらがどのように解決されるかを示す.もう一つはホモポリマー及びコポリマーの混合によるナノ微粒子の形態形成問題の数理モデルについて述べたい.適切な自由エネルギーとその勾配系である保存型Cahn-Hilliard方程式の連立により様々な形態予測が可能となることを示す.

マテリアルズインフォマティクスの現状と展望:データサイエンスの視点から
11:10-11:30

吉田 亮

情報・システム研究機構 統計数理研究所

ものづくりデータ科学研究センター

教授(センター長)

吉田 亮

【講演概要】

材料研究のパラメータ空間は極めて広大である.例えば,低分子有機化合物の化学空間には,10^60を超える候補物質が存在すると言われている.先端材料の研究開発では,候補物質の選択以外にプロセスや添加剤・溶媒選択等のパラメータが加わり,パラメータ空間の次元は爆発的に増大する.マテリアルズインフォマティクス(MI)の問題の多くは,このような広大な探索空間から所望の特性を併せ持つパラメータ(新物質)を同定することに帰着する.我々は,機械学習とベイズ推論を基軸とし,物質構造の“表現・学習・生成”を目的とするデータサイエンスの方法論及びソフトウェアを開発し,低分子化合物・高分子・無機物質・複合材料など多岐に渡る材料を対象に実証研究を推進している.本講演では,データサイエンスの観点からMIの最新動向と将来展望について述べる.

ポリマー材料開発からみた"ポリマー・インフォマティクス
11:30-11:50

竹内 久雄

三菱ケミカル株式会社

研究開発企画部

担当部長

竹内 久雄

【講演者プロフィール】

㈱三菱化成工業に入社後、国内大学ならびに海外大学で高分子材料や複合材料の解析・計算科学を学び社内の製品開発に活用。専門は高分子材料の物性解析・計算科学。企業における計算科学活用の黎明期から当該分野に従事し、現在はMIや計算科学の材料開発への展開を図っている。

【講演概要】

近年、材料の研究開発に対する新たなアプローチとしてMaterials Informatics(MI)が注目されている。米国のMaterials Genome Projectで端を発した無機材料の研究報告と比較するとポリマー材料の研究報告は少ないのが実情である。更に、“ポリマー材料の開発”という観点にたつと極めて限定されると言えよう。ポリマー材料のMIを広く“材料開発へのデータ科学の応用”ととらえると、開発対象に応じてポリマー材料のMIは広いスペクトルを有することになる。これは、ポリマー材料の特性が、モノマーの化学構造に強く依存する場合もあれば、配合やプロセスで決まるモルフォロジーに支配される場合もあるからである。どのような問題を扱うかによって必要とされるMI技術のavailabilityも異なるように思われる。本公演では、ポリマー材料の有するこの階層の観点から、MI技術について議論したい。