メインシアター(東5ホール会場内)

2019年1月31日(木)

【特別シンポジウム】超スマート社会を実現する全固体電池最前線

【開催時間】10:30-11:50

 
全固体電池に関わるナノテクノロジー
10:30-10:50

射場 英紀

トヨタ自動車株式会社

先進技術開発カンパニー 基盤材料技術部

担当部長

射場 英紀

【講演者プロフィール】

87年4月 トヨタ自動車(株)入社
自動車用軽金属部品の研究開発に従事、93-96年 現産総研派遣、水素貯蔵合金を研究。97年東北大学大学院工学研究科工学博士取得。
00年技術統括部で先端研究の企画統括・産学連携推進担当、08年電池研究部設立(部長)18年基盤材料技術部、電池材料技術・研究部 担当部長として現在に至る。
専門は材料工学、ナノテクノロジー、新型電池の研究開発とマネジメント

【講演概要】

サステナブルな社会を実現するためには、二酸化炭素の排出の少ない電動車の普及が必要である。
その中で、次世代の電動車の蓄電池の性能向上は最大の課題であり、これに対して全固体電池への期待が大きい。
最新の全固体電池の研究開発の現状と課題を説明し、それを支える基盤技術としてナノテクノロジーの活用事例を紹介する。

酸化物系固体電解質を用いた全固体電池の作製
10:50-11:10

金村 聖志

首都大学東京大学院

都市環境科学研究科

都市環境科学科 環境応用化学域 教授

金村 聖志

【講演者プロフィール】

1980年 3月 京都大学工学部工業化学科 卒業
1995年 3月 京都大学大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻 助教授
2002年 4月 東京都立大学大学院工学研究科 応用化学専攻 教授
2010年 4月 首都大学東京大学院都市環境科学研究科 都市環境科学環 分子応用化学域 教授
2018年 4月 首都大学東京大学院都市環境科学研究科 都市環境科学専攻 環境応用化学域 教授
専門分野:セラミックス化学、電気化学、エネルギー化学







【講演概要】

Li7La3Zr2O12 (LLZO)を用いた全固体電池に関する研究が活発に行われている。本発表では、エアロゾル析出法を用いて正極層をLLZOペレット上に作製し、Li金属を負極に使用した全固体電池の作製について紹介する。正極としてはLiCoO2やLiNi0.5Mn0.2Co0.3O2などを用い、イオン伝導助剤としてLi3BO3を用いた電池の作製を行なった。その後、熱処理を利用している電極層内の伝導性を改善した。作製した電池の電気化学的な特性を評価した結果、比較的良好な充放電特性を得ることができた。また、サイクル特性も良好であり、全固体電池として機能することが分かった。これらの結果は、固体電解質と正極あるいは負極との界面接触が改善されたことによる。界面での電荷移動をスムーズに行うために添加したLi3BO3の効果が大きいことが分かった。酸化物系固体電解質を使用する場合、固体と固体の界面接触を良好にすることがキーテクノロジーとなる。

硫化物系リチウム超イオン導電体の開発と固体電池への応用
11:10-11:30

鈴木 耕太

東京工業大学

物質理工学院

助教

鈴木 耕太

【講演者プロフィール】

2010年 東京工業大学 修士課程修了
2010年 日本学術振興会 特別研究員(DC1)
2013年 東京工業大学 博士課程修了 博士(理学)
2013年 東京工業大学 助教
2017年 JSTさきがけ研究員(兼任)、現在に至る
専門分野:電気化学、固体化学

【講演概要】

ポストリチウムイオン電池の開発が求められる中、全固体型のリチウム電池の実現が期待されている。全固体リチウム電池は安全性、エネルギー密度に優れるデバイスとして位置付けられているが、その性能は電池内のイオン輸送を担う固体電解質材料の物性に強く依存している。本講演では、これまでに報告されている固体電解質材料の分類や、開発状況について説明した上で、特に高いイオン導電率を示す、Li10GeP2S12系電解質の開発状況および電池への適用例について紹介する。様々な固体電解質を用いた全固体リチウム電池の性能や課題について、最新の動向を踏まえて講義する。

全固体電池における界面と電池特性
11:30-11:50

高田 和典

物質・材料研究機構

エネルギー・環境材料研究拠点

拠点長

高田 和典

【講演者プロフィール】

学歴
1986年3月 大阪大学大学院理学研究科物理学専攻博士前期課程修了

職歴
1986年4月 松下電器産業入社
1991年12月20日 大阪市立大学より博士(工学)を授与
1999年7月 無機材質研究所 特別研究員
2002年4月 物質・材料研究機構 主幹研究員
2018年4月 現職

【講演概要】

固体電解質を用いた電池の固体化は、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン電池に高い信頼性を付与し、その用途を拡大するものと期待されている。電池の固体化に不可欠なものは高いイオン伝導性を持つ固体電解質であることは言を俟たないが、固体電解質をはじめとするイオン伝導体は、接合界面においてしばしば物質本来のものとは異なるイオン伝導挙動を見せることがある。接合界面からナノメートルの領域で生じるこの特異なイオン伝導挙動は「ナノイオニクス」と呼ばれる学際領域を形成し、その重要性は全固体電池の性能を決定づける界面の報告により広く認識されるに至っている。講演では、硫化物系固体電解質を使用する全固体電池における正極界面で発生する抵抗成分など、全固体電池の性能に大きな影響を及ぼす界面の実例を紹介する。